むかしばなし 4
三郎はその箱を開いて天を拝みました。
すると、三郎のからだがたちまち小さく小さくなって、一寸の虫になってしまいました。
そこに鬼人が追いついてきましたが、草の葉かげにひそんでいる三郎を見つけることはできませんでした。
そして、
「逃げ足の早いやつじゃ。残念やった。」
といって、すごすごと山へひき返してしまいました。
三郎はもとの人間の姿にもどり、十三里の山道を歩いて、前によった一軒茶屋に行きました。
茶屋の主人はびっくりして、
「あんたは三ヵ月ももどってこんから、いよいよ食い殺されたとうわさしておるところでした。
まあもどってきてよかった、よかった。」
といってくれました。
三郎はそれからまた長い旅をつづけて、何年ぶりかに家に帰りつきました。
すると久しぶりにあった兄弟三人と母はたいへん喜んでくれて、いろいろと話はつきません。
三郎はアチャヤ姫のこと、鬼人の父のことをすべて話したら、みんな泣いてアチャヤ姫に同情しました。
ところで、兄の一郎は嫁をもらっていました。
何年も子どもはいませんでしたが、三郎がもどってくる前、はじめて女の子が生まれたのでした。
その子は日がたつほどにきれいな子になりました。
「この子はアチャヤ姫のようにきれいな子じゃ。」
三郎はこういってほめるのでした。
ところが、その女の子は、生まれたときから右の手をしっかりにぎりしめたままでした。
だれが離そうとしても決して離せないのでした。
あるとき、三郎がなにげなく、
「それなら、おじさんがあけてくるっからね」
といって、右手をとったら、ぱっと手を開いたのでした。
「あっ。」
みんな驚きました。ところが、不思議なことに、その小さな手のひらには、カンザシのかけたのがあったのです。
「あっ。」
三郎は思わず目を見はりました。
そして、そのカンザシと合わせてみたら、ぴったり一本になります。
これはまちがいなく、アチャヤ姫の持っていたカンザシです。
それから幾年も幾年もたちました。
その子は年をとるごとに、アチャヤ姫とそっくりの美しい娘になっていきました。
そしてとうとう三郎といっしょになって、一生をむつまじく、くらしたということです。
おしまい。