大統領選挙と「日本問題」 7

ソンガスは、アメリカも日本のような経済戦略を持ち、成功した日本に学ぶ必要性を繰り返し、単純な「日本タタキ」にはくみしませんでした。


その理由を彼は次のように述べています。


「外国批判をすれば人気が出るから、米国の政治家も日本の政治家も同じように相手を悪者にしてきた。


しかし、日本を批判したところで問題は解決しない。米国の抱える問題の大半は米国自身が作りだしたものである」と。


ソンガスによれば、アメリカも政府がテコ入れをして(日本やドイツのように)産業基盤を保護すべきだとしています。


そのためには、兵器開発の膨大な国家予算を民生品の技術開発に向ける必要性を主張します。


そして、従来の民主党が進めた保護主義では国際競争力はつかないと主張していました。


しかし他方では、日本に対する批判を忘れたわけではなく、ソンガスは日本が世界を営利主義の視点から捕らえており、日本の国際貢献、とりわけ湾岸戦争時の日本の姿勢を強く批判していました。

大統領選挙と「日本問題」 6

しかし、コマーシャルが一斉に放映された後にケリーの支持率は低下し、日本タタキの狙いは見事に外れてしまったのです。


後にケリー自身は、日本タタキは失敗であって、自分自身を売り込む視点が欠けており、有権者がいちばん関心のある景気後退に焦点を合わせるべきであった、と語りました。


ポール・ソンガス元上院議員(民主党、マサチューセッツ州選出)


・・・ソンガスは1941年生まれで、法曹界に身を置いた後、連邦下院議員を2期務めました。


そして、79年から85年まで連邦上院議員となり、カリスマ性はないですが革新的政治家として評価を上げました。


ソンガスは、92年1月20日から流したテレビコマーシャルで、無人の暗い工場を背景にして次のように語っています。


「日本をたたくだけではこの工場はオープンできない。


アメリカ人は自分の運命を自分で切り開いていくべきだ」と。


"冷戦は終わり、日本が勝った"というのが、ソンガスのうたい文句であり、民主党の中では最も自由貿易寄りです。

大統領選挙と「日本問題」 5

「(日米貿易の)現状は、まるでアイスホッケーの試合のようだ。


我々の製品がゴールに入るのを彼らが妨害しているのだ。


ブッシュは日本に懇願して、わずかな譲歩を引き出しただけだ。私が大統領になったら、懇願の時代は終わりにする」と。


ここで取り上げられているテーマは、"不公正な日本と闘い、国を守るケリー"ということでした。


無人のゴールネットに寄りかかったケリーは、


「日本に厳しいと他の候補は私を批判する。


しかし日本のマーケットをこじあければ、1日に3000人、1年で100万人の仕事の量が増えることになる」と結びました。


しかし他方でケリーは、連邦議会において自由貿易寄りの姿勢を示し、(経済不況は)アメリカにも責任の一端があることを認めていました。


また、ニューハンプシャーの予備選挙を前にして、「付加価値の高い雇用を、優先的に創出する産業政策が緊急の課題である」と主張しました。

大統領選挙と「日本問題」 4

冷戦後の初のアメリカ大統領選挙運動が展開された中で、民主および共和党の大統領候補者たちは、現職の大統領であるブッシュの内政-経済政策、人種政策および対日政策に関して強弱の差はあるものの、折につけて批判してきました。


そして彼らは総じて、日本に対して強硬な姿勢を示していました。


そこで以下では、予備選挙の段階を通じてみられた各政党の主な大統領候補者の日本に対する政策を紹介し、アメリカ函民の「日本問題」に関する認識の一端を検討することにします。


ボブ・ケリー連邦上院議員(民主党、ネブラスカ州選出)


ケリーは、1943年生まれでベトナム戦争に従軍し、膝から下の右足を失いました。


ケリーはレストランのオーナーから82年のネブラスカ州知事選挙に打って出て当選し、83年から87年まで知事を務めました。


また、89年にはネブラスカ州選出連邦上院議員となり、党内ではリベラル派に属し、湾岸危機では武力行使に強く反対。


さて、全米のトップを切って92年2月18日、ニューハンプシャー州で予備選挙が行われましたが、その前月の1月29日、選挙のコマーシャルが一斉に流れ、テレビ広告においてケリー上院議員はスケートリンクに立って次のように視聴者に訴えました。

大統領選挙と「日本問題」 3

最近、アメリカの世論は景気の後退により、保護主義に傾きつつあるように思われます。


実際、アメリカの対欧貿易収支は黒字に転じたのに、対日貿易赤字は1向に改善されず、むしろ増大の傾向にあります。


また、日本は一方で、自国市場を構造的に事実上、閉鎖しておきながら、他方で自由で開かれたアメリカ市場で稼ぎまくっているといった類の意見がまかり通っています。


当面のところ、アメリカ国民が排他的な孤立主義に走っているという証拠はみられないものの、日本に対する信頼度が低落する傾向にある点は留意すべきことでしょう。


そこには、再三にわたって指摘してきたように、やはり冷戦の終焉、ソ連崩壊による敵の消滅、そしてアメリカ経済の後退に伴う日米経済関係の大きな変化が背後にあるでしょう。


日本に対する「重要度と信頼度のギャップが構造化しつつある」といわねばなりません。


その意味で、アメリカでは、日本が常にやり玉に挙がり、かつ「日本問題」が大きな争点となる可能性が恒常的に存在しているといっていいです。

大統領選挙と「日本問題」 2

ブッシュ大統領の来日に加えて、「日本問題」に輪をかけた事件が、当時の宮沢首相および桜内衆議院議長の「問題発言」でした。


とりわけ桜内議長が地元の支持者を前にして、アメリカは「日本の下請け」であると話し、しかも、「アメリカ人労働者の3割は文字も読めない」と語ったことは、アメリカの識者を激怒させました。


また、日本および日本企業に対する風当たりをいっそう強めることになりました。


大統領選挙運動が進行中において、アメリカの国民は事ある度に、この「侮辱発言」を思い起こし、それが日本批判あるいは「日本タタキ」につながることもなしとはいえないでしょう。


こうした中で日本の外務省は92年4月14日、『米国における対日世論調査』(92年1月下旬から3月上旬にかけて実施)の結果を発表しました。


そこでは、日米間の協力関係や国民の問での相互理解の現状に関して、認識の悪化傾向がみられました。


同調査によれば、日米の協力関係がよくないとみる割合は、国民および識者のいずれにおいても、前年(91年)よりも倍増し、83年にこの質問項目を設けて以来最高になったといいます。


その理由として、多くの回答者が貿易や経済問題などを挙げており、これを解決するために効果的な政策を打ち出せない日米の政治指導者や政府に対する不満表明、いらだちがあると指摘していました。

大統領選挙と「日本問題」

『ニューヨーク・タイムズ』紙は、社説において次のように批判しました。


つまり、「ブッシュ大統領が雇用拡大を掲げて、日本に対してアメリカ製品の輸入拡大を要求したのは、筋違いであった」と。


日本がアメリカの製品をもっと輸入すれば、アメリカの国内での雇用が増大すると考えるのは誤りであって、そもそも貿易赤字と失業問題は関係なく、アメリカの貿易赤字の原因は、生産するよりも多く消費するという、アメリカ自身の問題であるといわねばなりません。


しかしながら、ブッシュ大統領の訪日は、一面ではアメリカ国内で「日本問題」をクローズアップさせるひとつの契機となりました。


その結果、我々にとって確かなことは、今や「日本問題」が妊娠中絶の是非や医療制度および税金問題等と並んで、少なくとも大統領選挙運動の争点のひとつとなる可能性が大きくなっていたことです。


もちろん、この時点では、アメリカ政治の中で日本が最大関心事というわけではありませんでした。


しかし、大統領候補者や有権者の多くが、「日本への対応」にきわめて敏感になっていたことだけは間違いないといえましょう。

気になるヨーロッパ鉄道・・・駅舎5

それを憂慮した見識者たちの反対運動によって、存続がかろうじて奪回されたいきさつがある。

一方、本家のアムステルダム中央駅には建て替えの話もなく、今なおオランダ国鉄のシンボルとして国民に親しまれている。

都市のターミナルがこのとおりだから、田舎の駅となるとあと何百年間長生きするのか、日本の駅舎とは桁違いの寿命に違いない。

石造やレンガ造の建物が多いせいでもあるが、元を正せば新参者の鉄道が伝統には常に謙虚で操業してきた結果、現在にいたって生活を楽しむ人々に親しまれて当然といえるだろう。

気になるヨーロッパ鉄道・・・駅舎4

アムステルダム中央駅も、一八八一年の築造以来、安定した均整美を誇るルネサンス様式の駅舎を構えている。

二編成の列車を左右に停車させるためにホームを長く配して、オランダ国鉄独特の駅の特徴を生かした風格でどっしりとしている。

東京駅の丸の内口駅舎は、この建物を手本として設計された。
こちらは一九一四年の開業である。

その後、関東大震災にて崩れた屋根が現在の状態に改変されたが、高度経済成長期には建て替えが計画されて明治村への移築が確定していた。

気になるヨーロッパ鉄道・・・駅舎3

実際、旅する者にとって、駅舎が立派であれば、それだけ鉄道を安全な乗り物として信頼することができたのだろうと察することができる。

そして何よりも、新参者の鉄道が古い街並を破壊せずに都市の中で存続していくための配慮でもあったに違いない。

ロンドンのセント・パンクラス駅では、イギリス伝統のゴシック様式が忠実に再現されている。
天を指す尖塔を携えた教会風のつくりが人々を圧倒する。

ベルギーのアントワープ中央駅は、大きなアーチ空間の中にきらびやかなステンドグラスが施され、貿易とダイヤモンド研磨によって得たこの地方の中世からの経済発展を暗示する豪華な面持ちを保ってきた。

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